10億円企業創成を政策にする方向性は2026年5月20日の第45回中小企業政策審議会の資料「労働供給制約社会における中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化戦略(案)に伴う政策の見直しについて」で示されました。(中小企業庁)

成長の核となる事業価値があり、経営者が本気で成長経営に取り組み、メインバンクも本気で伴走支援すれば飛躍する可能性がある地域企業が成長志向に向かうメカニズムを構築する政策です。

売上高10億円を目指すことや経営の質を高めることで経営者が求める価値を実現できる企業となるためのビジョンを宣言・公表した企業に対し、経営支援、効果的な投資支援や金融支援等を集中的に行う政策を、2026年度に詳細検討開始する旨が示されました。

同時に、売上高1億円や高収益を目指す企業への支援も示唆され、こちらについても2026年度に詳細検討開始する旨が示されています。

出発点は「100億円企業」をどう創出するか

政府は既に2025年から「100億企業」への成長を促す政策を進めてきました。100億企業の創出を検討する過程で、100億円に至るまでの成長段階や成長の壁が分析され、その中で10億円という規模が重要な節目として浮かび上がってきたものと考えられます。

当然のことながら企業は一気に100億円へ成長する訳でありません。一定の売上規模で成長が停滞し、その壁を越えて次の規模へ進むことが明らかになっています。

2025年版中小企業白書でも、100億企業の成長過程を分析する際に、

  • 10~20億円台
  • 30~40億円台
  • 50~60億円台

という規模区分で企業を抽出し、それぞれの段階で成長企業と非成長企業を比較している。 (中小企業庁)

この過程で「100億円企業を創るには、100億円を直接目指すだけではなく、その手前の成長段階をどう突破させるかについても考えておく必要がある」という認識が生まれたのではないかと考えられます。


「1~10億円」を一つの成長ステージとして捉える(仮説)

ここから先は、現時点では筆者の推論です。

100億企業への成長を促す政策立案のため、企業の成長過程を研究する中で、企業を売上規模ごとの成長段階として捉える考え方が形成され、その一つとして、「1~10億円程度」を一つの成長ステージとして捉える考え方が生まれてきたのではないかと考えられます。

例えば各層に含まれる企業数を考えると、売上10~100億未満の企業数が約9.1万者であるところ、売上1億~10億未満は約60万者で、大きな隔たりがあります。売上1千万~1億未満だと約140万者です。

この現象は(1億や10億、100億とぴったりの数字が全ての企業に当てはまるとは思えませんが)、企業は規模別に「成長の壁」というものに直面しており、それを乗り越えることが難しいために成長が難しい。それはもちろん、企業努力によって乗り越えるものであるが、政策でもって支援することで壁を乗り越えられる企業が増えるなら、それを推進したいとの考えたのではないでしょうか。

このように推論すると「10億円企業政策」は突然に生まれたものでも、「まずは100億円を目指す企業(比較的少数)の支援を先に行い、次にすそ野(比較的多数)を広げていく」という単純な発想でもなく、「日本全体を活性化させ、稼ぐ力を身に着けさせるためには、最終目的に近いところにある企業を先に育成する政策を整備、次に、その対象者となる企業が継続して生まれるようにすそ野を耕していく」という発想で設けられたのではないかと考えられます。